在ブリュッセルJBCE(CSR部門)のEU政策における影響力

飛行機が一機も飛んでいない晴天のフランクフルト、月曜朝。

恒例の日独ビジネスランチに行って来ました。

今日のゲストは、在ブリュッセルJapan Business Council in Europe(JBCE) のCSR部門議長の木下由香子氏。飛行機が飛ばず、急遽今日の会議のために、早朝ブリュッセルから電車で駆けつけてくれたのです。

ヨーロッパ政治における影響力(how we contribute to the European Policy)という、実は国際政治学部出身で、最近、ドイツのCSR関係の仕事も多くさせていただくようになった私にとっては、実に興味がある活動とテーマでした。
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まずお話は、CSRという概念が、いかに新しく、また一つの言葉で定義づけが難しいという事実の説明がありました。

Corporate Governance, Employment, Donations, Human Rights, Social Contribution, CO2 Emissions, Compliance, Bio diversity

など、一つ一つは決して新しい概念でない一方で、世の中の流れによって、「これらの概念の複雑な組み合わせ」+「まだ名のない概念」で、形作られつつあるもの、それがCSRであり、よって、個人や企業、国や地域によって、イメージするものが異なってくる・・・というのが、今回のテーマの正に核となる部分なのです。

まず、「ヨーロッパでCSRという言葉が使われるようになったのは、まだ10年も経っていない2001年から」というお話にびっくりしました。ヨーロッパは、環境や人権についても、世界の中では最先端というイメージがあるので、もっと前から定着していたのでは?と思われるかもしれませんが、CSRという言葉自体は、大陸ヨーロッパに上陸して10年に満たないということです。・・・でもこれは、決してCSRが示すような概念がヨーロッパに存在していなかったのではなく、むしろCSRという名前などない背景で、CSRそのもののような哲学を持って何十年も活動しているヨーロッパ企業は現に多くあります。ちょっとカジュアルになりますが、「ロハス・LOHAS」という言葉と一緒で、似て非なるものは存在していたけれど、新たに概念としては、外国から(主に米国発祥が多い)上陸・・・というのと、同じパターンだと思います。

EUの欧州委員会で、政策議論がスタートする際、出発点はいつも「グリーンペーパー」と呼ばれるものからで、これが「ホワイトペーパー」となり、新たな政策が生まれる・・・という順序ということも、今回はじめて知りました。

そして木下氏が率いるJBCEのCSR部門は、ヨーロッパで活動する日本企業のロビー団体(日系グローバル企業60社から成る)として、このグリーンペーパーの時点で、オピニオンや要望などをまとめたステートメントを提出し、EUの政策立案に影響を与えることで、欧州での日本企業の活動を保護し、発展させていく・・・という、非常にチャレンジングで、大切な活動をされているのです。

例えば、CSRの欧州委員会では、CSRの活動を、一つの数字データだけで表すために、KPI(Key Performance Indicator)と呼ばれる指標の標準化に向けて動いているのですが、JBCEは、この数字だけでは、企業のCSR活動の全体像を表すことが出来ないと、標準化への動きに異議を唱えています。木下氏の意見では、欧州委員会はロビイストで政治の世界であるので、黙っていては、やはり彼らにとって都合のよい政策が出来上がってくることは、必然なのだそうです。いくらヨーロッパで影響力のある日本のグローバル企業の団体といっても、外国の企業として、筋金入りの欧州委員会のロビイストたちに、どこまで政策について影響力を与えられるのか?彼らはどれだけ、日本企業など外国の声に耳を傾けるのか?という、疑問が出てきます。この辺りは、やはり、忍耐強く活動を続けていくことに意味があるそうです。例えば、ポジティブなフィードバックとしては、JBCEが提出したステートメントが、欧州委員会のCSR部門ホームページに掲載されたり、JBCEのバックグラウンドにもなっている日本の環境技術などの情報面に興味を持ったスペインの団体から、貴重な会合に招待されたりなど。・・・ネガティブフィードバックとしては、政策の立案に重要な影響を及ぼす会議に、JBCEは招待を受けなかったり、、、、、などだそうです。でも、例えば日本企業だけまとまるのでなく、アメリカの商工会議所にも声を掛けてネットワーク化するなど、目的に近づくための木下氏の冷静な戦略と行動力は、素晴らしいなあと思いました。

私は個人的には、EU内だけでも国同士のぶつかりあいが激しい中、よそ者であるアジアの日本やアメリカの企業の声が本当の意味で反映された政策がつくられるためには、EUにとって得になる提案やアイディアか?または、灯台下暗しというか、EUだけでは見えなかった死角に、第三者として日本やアメリカの視点が入ることで、政策の層や柔軟性が増し、将来的に耐性があり、長く役に立ち、広く多くの人々や経済がポジティブな影響を受ける・・・といった、結局は、「どれだけEUにとって利益があるのか?」・・・ということが、一番のポイントで、成功への鍵なのではないかと強く感じました。

個人の人間関係でも、ビジネスでも、そして国同士がぶつかる国際政治、政策決定でも、結局は、

「自分側にもメリットとなる、相手にとってのメリット」

をうまく説明し、説得し、接合点・妥協点をみつけていく

というプロセスの連続なんだと思います。

こういう場を、日々体験し、経験を積まれている木下氏のキャリアをとてもうらやましく思いました。ヨーロッパは、交渉を学ぶには、世界で一番適した場所かもしれません。百戦練磨になれそうです。ちなみに、女性管理職を増やすなどをはじめとして、ダイバーシティーという概念も、欧州委員会のCSR政策では大きな議事事項ということでした。

2001年にヨーロッパ大陸に上陸したCSRという概念は、まず2年後の2003年に、ヨーロッパではCSRは企業にとって、

「ボランタリー(Voluntary)であるべきか?マンダトリー(Mandatory)であるべきか?」

というテーマから議論がはじまり、議論の結果、

“ボランタリー(Voluntary)”

として、スタートしたのだそうです。

これが年々、社会の変化と共にどんどん変容を遂げ、2006年には欧州委員会が再定義し、「サステイナブルな社会・環境貢献活動を、業務・ビジネス戦略(Business Strategy)に取り入れること」となり、また金融経済危機を経験した、2010年は更に定義が書き換えられ、既に今の時点で、2011年に、また欧州委員会が新しい定義づけを発表することが決まっているそうです。・・・まさに、ヨーロッパのCSRは、動きが激しく、急成長・急変化を遂げている分野であるということが出来ると思います。

最後にとても興味深かったのは、

「ヨーロッパ(欧州委員会)は、様々な分野で、世界一番になりたい、世界の標準型を欧州でつくりたいという野望がある」

という木下氏の発言でした。

「実際ヨーロッパは、財務、環境関連の事項では、既に事実的に国際標準になっている・・・」と、EUを高く評価した大前研一氏のコラム記事を、先日読んだのを思い出し、本当にそうだなあ・・・と、確信。

10年前、ヨーロッパに移り住んだ時、なんてスローで退行的で、生産性が低いところにきちゃったんだろう・・・と、「成長命!」の私は、がっくりと思ったものですが、最近は、「アジアやアメリカよりも、ずっとエキサイティングかもしれない・・・」、「選択は間違ってなかったかもしれない・・・」と考えが変わってきています。

特に環境・CSRをはじめ、日独のコラボで出来ることの可能性は限りなく、またこの2国の経済・社会・文化連携は、今の世界に強く求められているとも思うのです。・・・少しずつ、大きな社会貢献が出来るように、私も個人としても会社としても、日独の架け橋になりたいと、強く思いました。
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by mikiogatawestberg | 2010-04-20 02:08 | 環境・CSR
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