3月11日のドイツのTV番組
3月11日の日曜日のドイツのTV番組は、地震、津波を超えて(こちらについても、無視はされてはいませんでしたが)、「フクシマから1年」という特集で一杯でした。ドイツ人は自ら、「福島の原発事故という事実を駆使(instrumentalisieren)して、ドイツの脱原発を達成した」と自覚していて、公けの認識にもなっています。実際原発事故が引き続き被害を拡げている日本では、原発よりも、地震・津波のことに焦点が向いていることを見ると、日独でこの部分は逆になっているように思えます。
私は去年、3月の福島の原子力発電所で1号機と3号機の爆発があり、まだ固唾を呑む状況の続いていた時、あるドイツ国内の仕事関連のセミナーに参加したのですが、そこの参加者の中でたまたま、ドイツの脱原発へ向けての政治的活動にとてもアクティブなドイツ人女性がいて、私が日本人ということを知りながら、目の前で、他の参加者の多くに向かって、 「このまま福島の状況がもっと悪化するようなことがあれば、ドイツは脱原発を達成するかもしれない・・・」 と、まるで半分、それを望んでいるみたいにも聞こえる発言をし、私は、どうして日本のことをそんな風に、自分たちの脱原発を達成したいがために、まるで道具として使うような感じで、日本人を目の前に飄々(ひょうひょう)と言うことが出来るのかと、その冷たさとずうずうしさ、また、遠い国で、自分たちには直接関係ないからという、非常に利己的な態度を、激しく罵倒したくなる気持ちに駆られ、いきり立ったことを覚えています。 その後、結局ドイツは、脱原発宣言を達成します。 セミナーの女性は、配慮や思いやりに欠けていたことは確かですが、でも世界に先立って今、脱原発、代替エネルギーを引っ張っているドイツの底力は、それくらいの、目ざとい考え方、そこはかとない忍耐・持久力、どんなことがあっても、目標にしがみついて絶対諦めないような、この女性のタイプのようなドイツ市民の力(全部ではありません。30年間、脱原発に向けて地道に活動してきた、あくまで一部のドイツ人です)が支えていることも事実なのです。そして、この層があったからこそ、今のドイツがあります。この前も書いたように、ドイツも、基本は日本と同じで、戦後のメジャー路線は、原発推進だったのです。今でも強い原発ロビーが存在し、もちろん大企業とも繋がりがあり、常に逆転を狙っているので、安住は出来ません(脱原発を達した今も、脱原発派は、一瞬も気を抜かず、目を光らせています)。過去には、サッカー好きのドイツ人の性向につけこんで、多数を味方につけようと、サッカー場のナイトゲームでライトを全部消したりする行為をして、「如何にドイツで、原子力が必要か?」と、アピールしたこともあるなど、基本構造は日本政府と東電と、実はそう変わらないんです。マスコミの操作や、多数派市民への情報、感情操作も、似たようなもの。では、今の日独間に生まれてしまった大きな違いは何なのか?と追及すると、「市民の違い」となるわけです。脱原発の活動に心血を注いでいる上記のような極端な女性みたいなタイプは一部ですが、そういう人たちも、世界の原子力ネットワークから抜け出るというような、大きな革命を起こすためには、やっぱり必要な人たち、ということになります。あと他の大部分の人たちは、そこまで極端な考えや行動はしなくとも、如何に「原子力が、人類が、自らコントロールすることの出来る範囲を超えている危険な技術であることを認識している」という点で、やはり市民一人ひとりの部分で、日本と比べた時、ドイツ人の平均点が高いというのが、悲しいかな・・・事実です。 論理の徹底と議論力を生育過程で叩き込まれるドイツ人と、協調と和の中での非論理、空気を読むことを生育過程で学ぶ日本人の間では、特に原発問題に関しては、日本人の私たちの乗り越えなくてはならない壁は、果てしないです。根本の教育から、間違っていた・・・とは言いませんが、これからの時代に対応していくのには「とても厳しい教育」であることは変わりなく、ちょうど今、日本は、教育や社会の根本を考える時に来ていると感じます。 テレビ番組では、震災から1年後の3月11日にドイツ国内で行われた脱原発のデモと同様に、日本での日本人による脱原発デモの様子の映像も沢山放映されました。 「70%の日本人が、原子力に反対している」とドイツのキャスターは言及していましたが、どのチャンネルの特集も、番組を観たドイツ人は、日本の今の風潮は「脱原発」という印象を受ける全体的な番組構成でした。かわって、地球の裏側の当事国日本では、「脱原発」は、メディアでは殆ど取り上げられなかったり、取り上げられるとしてもとても小さかったり、堂々、少数派ですよね。実際はそこまで“少数派”でないと思いますが、“少数派”であると、ラベル付け、印象付けが意図的にされている・・・ということです。また一方で、ドイツメディアが取り上げたように、そこまで多くの日本人が、今デモに参加し、70%が大きな声で”脱原発”を叫んでいるというのも、そのまま事実、というわけではないと思います。 確実に言えることは、メディアや番組は、送り手、又は送り手の背後にある圧力などによって、どの国のどのものでも印象操作がされているということ。それを承知で、複数のメディアから情報収集し、精査し、自分の頭で考えて、事実をつなぎ合わせ、編集し、全体像を見ていくようにしなければいけないということだと思います。 努力と継続が必要ですが、これをしないと、日本はもちろん、これからの世界で生きていくのは、本当に厳しくなっていくと思います。
by mikiogatawestberg
| 2012-03-12 22:24
| 脱原発・No Nukes
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