お姉ちゃんと9ヶ月の歳の差、兄弟姉妹は全部で9人・・・etc
7月の夏休暇、トルコ・アンタルヤでの出来事です。
先日のブログでも書きましたが、ドイツ人やイギリス人など、ここは、海岸沿いの典型的なビーチ&ホテルリゾートなので、1~2週間が平均的な滞在期間ですが、滞在中は、大抵どのカップルもファミリーも、ホテル近くのビーチやホテル内のプールで一日を過ごすので、毎日となりのデッキチェアに座ったり、エレベーターで何度も顔を合わせたり、朝食のビュッフェで、同じパンのところに並んでいたりと・・・大人も、子供も、新しい友達をつくるチャンスが沢山あるのです。毎夜開催のキッズ・ディスコでも、司会のお兄さんは、 「みんな~。ウアラオプ(バケーション、休暇に相当する、ドイツ人の愛するドイツ語のひとつ)で、新しい友達は、沢山出来たかな~?!?!?」 と、声を掛けます。学校や仕事のある日常では、中々まとまった一緒の時間をとることが難しい、慣れ親しんだ家族で過ごすのもステキですが、いつも同じ場所やビーチ、同じ顔ぶれでは、子供は特に退屈してきます。うちの子供たちも、キッズクラブや、プールなどですぐに沢山の友達が出来て、そうすると、子供経由で、両親を紹介しあって、その晩は一緒に夕食をするなどして、交友が広がっていくわけです。 1~2週間の滞在といっても、到着日や出発日は皆、少しずつずれているわけで、そういう意味では、毎日が、一期一会。楽しく一日中遊んで、一緒にご飯を食べて、つかの間の時間で友情を育んで、、、そして、数日後にやってくる別れ&その繰り返し。大人にとっては、それが場合によっては、ロマンチックな出会いなどもあったりして、それが“休暇”というものの特徴でもあると思うのですが、子供たちにとっては、人生においての、出会いと別れをものすごいスピードと回転率で経験する1~2週間と言えると思います。 ・・・と、色々書きましたが、本日の本題は、これからです。 今回の休暇で、7歳の息子が仲良くなって、友達になったドイツ人の男の子の話です。 息子より2歳上の9歳のアレックス君(*仮名)は、ドイツから今回家族でトルコに来て、私たちのホテルと同じホテルに滞在していました。ドイツでは地域のサッカーチームに入っていて、サッカーが上手なので、ワールドカップ以来、柔道よりもサッカーに興味が移ってきているうちの息子とすぐ仲良くなり、毎日、サッカーをして一緒に遊んだり、プールでもぐりっこをしたりと、気づけば、朝のビュッフェが終わると、すぐに2人で遊びに行ってしまうという感じでした。そしてお昼になると、ホテル内のランチで合流していたのですが、いつからか、毎日ランチは、いつもアレックス君もうちの家族に入って、一緒に食べる・・・という感じになっていました。 とってもしっかりした優しい男の子で、日本のことにも興味を持って、ランチの時間も、沢山私に聞いてきました。私も、毎日ランチにうちの家族に一人で来ているので、アレックス君のお母さんとお父さんは大丈夫かな?と家族のことを色々聞いてました。・・・なんとなく???とか、話しずらそうなところも感じなかったことはないのですが、この時点では私は、全くなにも気づいていませんでした。 「せっかくだから、一回、ご両親に挨拶させてね」 と、ある日ランチの後、アレックス君のお母さんが座っている、ホテルプールの、デッキチェアに一緒に連れて行ってもらったところ・・・ 「アレックスのPflegeeltern(養母)です。こちらが(横の男性を指差して)、私の再婚の夫です」 と、紹介がありました。アレックス君は、1歳の時に養子として引き取られたとのことでした。休暇先で出会った人に、わざわざ最初から「養母」と名乗る必要はあるのかなあ・・・?という疑問は少し残りましたが、ここまでは、そこまで驚きではありませんでした。 そして、この日の晩、アレックス君のご家族と一緒に、夕食後、ホテルのバーでご一緒したのですが、この時に、アレックス君の生い立ちの衝撃的な事実を知ることになったのです。 アレックス君の産みのお母さんは、ドイツ内の新興宗教の幹部で、お父さんは現在若干24歳(アレックス君誕生当事は、なんと15歳)で、やはり同じ団体に属していて、アレックス君は、同宗教の独自の教義によって出来た子供だったということなのです。そして、その産みのお母さんは、アレックス君の他にそれぞれ別の男性との間に、なんと8人もの子供を有しているとのこと。本来であれば、アレックス君もその団体から出ることはとても難しいはずなのですが、このケースの場合、アレックス君の若いお父さんの家族が、「子供をつくることに及ぶ前に、大量のアルコールを息子に飲ませた」と、産みの母である女性を裁判で訴え、その結果、生みの母である女性は逮捕され、現在刑務所にいるので、アレックス君が養子として、引き取られることが可能となったわけです。 今回、アレックス君の育ての母(養母)とも、たくさん話をしましたが、彼女には最初の結婚から、既に2人の成人近い息子がいて、今の夫(アレックス君の養父)との間に、アレックス君と9ヶ月違いの娘1人がいます。この10歳の娘さんももちろんこのバケーションに来ていたのですが、とっても愛らしくて良い子で、すぐにうちの娘たちと仲良しになりました。そして、髪の毛の色も、顔立ちも、なぜだかとっても、アレックス君とそっくりで、本当の兄弟といっても、ほとんど誰もそう疑わないというレベル。 ・・・でも、機会ある毎に、育ての母は、 「私は養母であり、アレックスは養子。自分の娘とは、本当に兄弟みたいで、とっても仲良しよ」 と語り、それをいつもアレックス君も聞いているのです。そして、9歳にして、上記の衝撃の事実も、全て隠すところなく、養母から聞いているとのこと。 「アレックスは、自分なりにこの事実をそのまま受け入れて、時間はかかったけれど、確実に前進している」 下手に隠したり、保護しようとしたり、そういうことを一切せず、アレックス君自身にも、自分達家族にも、それ以外の人にも、徹底して事実をいつも語るという、一見冷徹のように見える行為は、でも同時に、驚くほど一貫していて、ぶれるところがない。養母として、責任を持って彼を受け入れ、育てている自信と本当の愛情があるからこそ出来るのだろうと思いました。 現に、アレックス君は、本当にステキな男の子です。サッカーも上手で、学校では勉強もがんばっていて、9ヶ月差のお姉ちゃんとも仲良し、そしてこうして家族で休暇にやってきて、オリエンタルな顔立ちのうちの息子とすぐに打ち解け、私や家族にも心を開いてくれて、話す内容もとっても、しっかりしていて、頭の良さを感じました。他の同年齢の男の子たちとちょっと違うのは、ふっとした拍子に、大人の男性のような表情になるところ。そしてやっぱり、何かを抱えているようなところが、子供らしさとはちょっと違う距離感のような形で出ているところがありますが、ネガティブということでは全然ない。抱えているものは重過ぎて、自分の存在意義について、他の9歳なんかよりも、本当に深く考えたりしなければいけないところは、こちらも切ない気持ちになりますが、養父母の愛情に包まれて、このまま大きく育って大人になった時、甘やかされてずっと育った男の子たちより、ずっと豊かで魅力的な男性になるのではないか・・・と、思ったのでした(+外見も甘いマスクで、とっても有望♪) 甘やかされ典型のうちの息子は(一応、普通のドイツ人とは、見かけが違う・・・日本語が下手、などの普通のドイツ人の男の子が抱えない課題は持っていますが・・・)、最後は、アレックス君のことを、 「うそつきだ~」 と、私と夫に言ってきました。 「お姉ちゃんと9ヶ月差とか、8人も兄弟がいるとか、アレックスは、うそばっかり言ったよ」 と。 「それはね、うそじゃないんだよ・・・」 と、返事をした私たちに、息子は、 「どうして、ママとパパは、うそつきの味方をするの?」 と突っ込み。 うちの息子は、これ以降の話を語るには、まだ年齢も精神発達も十分でないと判断したので、今回、本当のことは語りませんでした。 数日後には、アレックス君家族ともお別れ。メールアドレスを交換し、これからも連絡を取れたらなあ~と思っています。 ドイツの中流家族が殆どの典型的トルコのリゾートですが、「普通の家族」という仮面を剥がすと、色々、出てくる、出てくる、ストーリーの数々。事実は小説より奇なり、です。普通の家族・・なんて、どこにもないのかもしれませんね~。そう見えてる家族ほど、蓋を開けると、とっても複雑だったり。人間は、なぞです。 アレックス君と息子。ビーチボールでも沢山遊びました。
by mikiogatawestberg
| 2010-08-18 00:14
| オピニオン・Opi・Meinung
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