“叫び”のムンク ~2人の人間、孤独の魂~

ずっと行きたかったSchirn Kunsthalle Frankfurtのムンク展に行ってきました。
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日本ではムンクと言えば「叫び」ですが、今回のブログタイトルは、敢えて逆の「“叫び”のムンク」、としてみました。世界的な画家の展覧会をする際は、ただ世界中に散らばっているその画家の作品の有名なものや数だけを集めてくるのではなく、今まで当てた事のなかった角度から、その画家や作品について、スポットライトを当てていく・・・というアプローチがヨーロッパの美術館の魅力、美術プロデューサーの腕とセンスの見せ所であり、またそうすることで、既に美術、芸術慣れしているヨーロッパの訪問者を呼び込み、満足させることが出来ます。

今回のムンクは、「Der moderne Blick(モダンな視点で見たムンク)」がテーマ。ちなみに“叫び”はありませんでしたが、とても興味深い作品ばかりでした。

ムンクの作品には、幾つかお気に入りというか、いつも繰り返されるテーマ(彼のトラウマ?!)というのがあります。同じテーマ、例えば「病気の子供」や「橋の上の女性たち」とか等のテーマで、色彩や構成などが異なった色々なバージョンが、平均1テーマにつき、2~5バージョンくらいあるのです。

私の今回の一番のお気に入り。タイトルは、「Zwei Menschen Die Einsamen(2人の人間、孤独の魂)」

こちら↓が、1905年に描かれたバージョン。
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こちら↓は、1933~35年に描かれたバージョン。
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同じ男女で、立ち位置は変っているけれど、二人の距離感は30年たった後もほぼ同じ、そして、二人は見つめ合っていない(しかも前を見ているけれど、同じところを見ている訳ではなさそう)・・・そんなところに心を動かされました。

キスの2バージョン。どちらが好みですか?!
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「Die weinende Frau(泣く女)」も彼のお気に入りテーマで、幾つものバージョンがあります。嫌な男だ!
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ノルウェー人のムンクが生きた19世紀後半~20世紀前半のヨーロッパは、パリやベルリンに芸術の中心があり、またX-rayやカメラなど技術の開発と急な発展があり、芸術もそれらから影響を大きく受け始めた時代。映画も大好きで、ムンクは足げに映画館に通っていたとのこと。また、カメラの魅力にもとり付かれ、お気に入りのコダックカメラを手に入れてからは、セルフポートレートを生涯取り続けます。その数がとにかくおびただしい。自分の顔ばっかり、色んな角度から何枚も撮っていて、眺めて飾っているなんて・・・
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確かに、ダンディな感じで美男子ですが、自意識過剰だったのですね。現代に生まれていたら、「今日のファッションはこれ!」とか自分の写真ばかり載せる自己顕示欲の強いブロガーになっていたのではないでしょうか?!

「芸術家は自分への執着が人一倍激しいからこそ、そこからの解放を求めるプロセスの中で、苦しみが昇華され、作品が生まれる」

・・・とは、私の芸術に関する考えですが、あまりにも強い自我執着(この強さが才能と比例しているのかもしれませんが)に、自らがやられてしまうことも・・・。

ムンクもやはり、多くの芸術家同様、晩年はうつ症状などで、入退院を繰り返します。

それでも、最後まで「自分」に向かい続け、老いた自分自身も、そのまま描き出しました。
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メッセージの「Write you life」
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は、「Live your life」

とも、聞こえます。

2012年5月3日【追記】偶然にも、今日、時事ドットコムでこんなニュースが!フランクフルトムンク展に不在であった作品「叫び」は、ニューヨークでオークション中だったんですね!・・・7人の入札者間での激しい競り合いで、たった12分で絵画の史上最高落札額「96億円」だったそうです。ヒョエー!!!絵画の価値って一体?お金って一体?人間て一体?色々考えてしまいます。
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by mikiogatawestberg | 2012-04-30 20:49 | 芸術・Art・Kunst
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