最低賃金とドイツの棲み分け社会、グローバリゼーション

先日もお伝えしたように、私の住むヘッセン州では、選挙が近くなり、至る所に各党のスローガンや、公約が書かれたポスターが貼られていますが、ポスターのイメージや内容をよく読んでみると、今のドイツ社会が見えてきて、とても面白いのです。

「10万の新しい仕事とポジションをを約束!(具体的な数字を入れているのが、とてもドイツらしい)」by CDU(キリスト教民主連盟・保守派)や、「ドイツの未来のために、子供・学校に投資!先生の数を増やす!」by FDP(自由民主党・リベラル派)などをはじめ、それぞれの党の候補者が、様々なアピール。選挙は結局は、いかに、人の共感と票を集めるかにかかっているので、これらのスローガンを見れば、今のドイツの問題や、人々の思いや潜在的な願い等が浮かび上がってくるのです。

私が面白いと思ったのは、SPD(社会民主党:Sozialdemokratische Partei Deutschland:ドイツの元首相シュレーダーさんを出した党)のこのポスター。
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訴えているメッセージは、「Jeder kann fuer Mindestloehne stimmen/全ての人が、それぞれふさわしい最低賃金を得るべき!」

SPDは労働者中心の政党とも言われるようですが、お気づきになられたかもしれませんが、ポスター向かって左側のカチッとしたスーツを着た中年の女性と、右側のブルーの作業着を着た男性、同じ“労働者”といっても、いわゆる“違うカテゴリー”に存在します。そこまで意識してこのポスターが作られたかわかりませんが、女性が着ている白いブラウス(ホワイトカラー)と、男性のブルーの作業着(ブルーカラー)の違いです。

イギリスのような身分の差としての、階級の違いはないドイツですが、ホワイトカラーとブルーカラーという階級差は、日本に比べると歴然としてあります。遡っていくと、背後にはドイツの教育システムもあり、職人や技術者を養成する専門学校と、大学を目指すグループと、子供たちは10歳で決断するところ辺りから、かなり明確に分かれていきます。

私が面白いと思った点は、階級差があるなしに関わらず、SPDは「ホワイトカラー、ブルーカラーとも、全ての人が、それぞれの納得する最低賃金を得るべき」と一貫したメッセージで、どちらのグループからも(働く人々全てということです)支持を得ようとしているところ。全てのパイを押さえる・・・賢いですね。

この「最低賃金を得るべき」という意味は、ドイツに長く住んでいないと良く分からない方も多いと思うので簡単に説明すると、ドイツでは数年前から、例えば、コンピューターエンジニアでも、カフェのウェイトレスでも、職種に限らず、汗水流して働いているのに文化的な暮らしが出来ないほどに賃金が低く、下手をすると、失業手当など各手当で仕事をせずに暮らしている人々の方が、良い暮らしをしていたり・・・という社会矛盾が生まれ、この「最低賃金」という概念が、人々の支持をぐっと集めるようになったという背景があります。

手厚い社会保障がウリ(?だった)な、大きな政府であるドイツは、元気に一生懸命働く人々には重税で、社会的な弱者(失業者、身体障害者、移民・難民などの外国人)を必要以上に(?)保護することで、矛盾はもちろん、それぞれ別の利害を持つ人々の中で、更なる嫉妬や、怒りを揺り起こすことになってしまっているという現実があります。人間は楽な状態から脱出するのはとても難しいので、政府に面倒を見てもらうことを当然と思い、就職活動さえしなくなるまだ20代や30代の若者や、大きな怪我をしたり、時には自分で自分を傷つけ、障害者の身分でいることを保持しようとする人なんかも、嘘のようですが、沢山いるのです。

・・・反面、ドイツも日本など他の先進国に紛れず、このような社会保障をしていくことは、将来的(もう現在も既に)に、不可能になってきています。そしてやはり同時に進行する、格差社会。持てるもの、持たないものの差(日本で言う、勝ち組、負け組ですね)については、最近ドイツのインテリ雑誌Spiegelでも、特集で取り上げられるほど、ドイツでも非常にホットなテーマです。

日本やアメリカのような資本主義でないドイツは、社会や人々が、それぞれの立場の声を明確に上げて、しつこいというか、とても“政治的”なので、この急激なグローバリゼーションに、ものすごい反動があがきがあるのも事実です。頑なに外国を批判するだけだったり、現実を見ることができない人も沢山いますが、外国に頻繁に行ったりしていて、時代の流れに敏感な若い世代は、世界の現実に気づき始め、重たい腰をあげてきています。

独立や起業も、ここ数年、以前に比べてずっとドイツ人にとって、現実的な選択肢になってきたんです。・・・こんなところも、日本と似ていますよね。大前研一氏は、「日欧米と、社会現象や市場が同時進行しているのが現代」というようなことをどこかで述べていらっしゃいましたが、本当にそうだなあと感じるこの頃です。
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by mikiogatawestberg | 2008-01-22 07:15 | 政治・Politics・Politik
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