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隠れマッチョ?!なドイツ~男女同権50周年~

ドイツでは今、今年で男女同権が確立されて50周年ということで、TV・雑誌・ラジオなどを中心に、「50年たった今、一体どんな風に社会での男女の在り方が変わったのか?」というテーマの下、様々な特集が組まれていて、ホットな話題になっています。

シュピーゲル誌のタイトル特集は、対照的な2枚の写真からスタートします。

時は1956年、職業訓練校での女子用の料理クラス場面。「かつて主婦(Hausfrau)であることは、押し付けられた抑圧ではなく、特権(privilegiert)であった」とのキャプション入り↓
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2001年「公園でバギーを押す若い父親たち」ということで、「仕事のキャリアと同じように、子供のことをケアするようになった」と、キャプションがついています↓
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ずらっと並んだ歴代首相に加えられた、紅一点の現ドイツ・メルケル首相↓
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この他にも、女性の裁判官、パイロット、サッカーの審判員、株式トレーダー、ボクシング世界チャンピョンが進出してきたなど等、記事全体的に、男女同権法以降「確実に社会は変わってきている」というニュアンスが漂っています・・・。

同誌の表紙写真も然り↓
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ドイツ語で、Emanzipation(「エマンチパチオーン」=「解放」という意味。単語の響き・意味共に、私のお気に入りのドイツ語の単語のひとつ)というリボンの下で、“男性”を象徴するムキムキな体つきの男性が全裸で小さく「何が、オトコには残っているの・・・?(Was vom Mann noch uebrig ist)」

・・・とこれだけでは、いかにもドイツの男女同権は戦後、素晴らしく発展してきた・・・というイメージを持たれかねないのですが・・・。
私個人の体験、周りを見回しても、そして公式なデータを見ても、私はドイツを、隠れマッチョの国だと思っています。

この特集で、私にとっては1番興味深かったのがこの資料データ(2005年時)↓
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男性の給与に比べての女性の給与をパーセンテージで表したものですが、上からフランス(89%)、スウェーデン(85%)、スペイン(83%)、アメリカ(81%)、イギリス(79%)、ドイツ(76%)、そして日本のデータ(69%)も入っていました。

ドイツは、ヨーロッパの中でも下位であるし、多くのドイツ人が典型的な男尊女卑の国と疑わない日本とも、たった7%との差です。(しかも最近の日本は、ダイバーシティーという名目で、企業が女性活用、条件の向上などに大きく動き出していることを実感しています。日本は動き出したら、何でも早いですものね)

面白いのは、平均出生率2.0を誇る、トップのフランスです。男性との給与差が少ないが故に、女性は自信を持って堂々職場復帰することが出来る→生活レベルを格段に落とさずに済むので、男性からも尊敬される→男性も協力的になる(=時に彼らが育休を取る)→高い月謝を払っても保育園に子供を預けることが出来る→保育園の数はますます増え、質も上がる→女性も社会も活気付く・・・と、良い循環が生まれているのでは?と思いました。

ドイツは、上記のようなフランスのような好循環がないため、76%という数字以上に、メンタルな面でも女性が自信を持てていない状況があると感じます。そして同時に、残念ながら「そうしておきたい・・・」というドイツ男性たちの本心が潜んでいる気がします。

ドイツ人の女性は、身長が170、180センチくらいの人も沢山いて、見かけはとっても強そうなのですが、実際話してみると、パートナーの男性の顔を伺いながら、自信無げに不安そうにしていることも多いのです・・・。そんな人たちにとっては、男尊女卑の国出身の筈の、私の元気さやエネルギーが、とっても不思議に写っているようです。もちろん、ドイツにも筋金入りのキャリアウーマンも沢山います。また、主婦として家をしっかり守り、PTAや教会活動に積極的な人々も沢山います。皆それぞれ、ああでもない、こうでもない、と試行錯誤しながら、頑張って人生を生きているんですね。自分自身が納得して、満足感があって、人や社会に貢献できるのであれば、理想の生き方モデルは千差万別、無数の成功型があるのではないかと思うのですが。。。

先日、幼稚園のドイツ人女性のママ友達と久々会ったのですが、いつもニコニコで、肌も輝いていた彼女が、別人のようにげっそりとなってしまっていて、とてもショックを受けました。

最近いつもパパが幼稚園にお迎えに来ているな~とは感づいてはいたのですが、彼女は、育休から3年ぶりに仕事に復帰したのだそうです。「パートは許されず、戻るのであれば、出張なども沢山あるフルタイムの席しかない」という条件で、意を決して、戻ったのだそうですが、とても幸せそうには見えませんでした。パパは元々自営業だそうですが、今は彼女がフルで復帰してしまったので、自営業をお休みして、ベビーシッターの手も借りず、2人の小さな子供をたった1人で世話しているとのこと。・・・・・残念ながら、こちらもとても辛そうなのです。子育てに積極的に関わったり、妻を応援したいことは確かだけれど、働き盛りの年の男性で、24時間を慣れない子育てだけに取られてしまう辛さは、簡単に想像がつきます。

彼女はとても優秀だし、本当に頑張って欲しい!とは思っていますが、反面、あと数ヶ月続かないのではないかなあ、と不安な気持ちです。きっとこのままでは、パパかママ、あるいは子供が限界を感じてしまうことでしょう。

彼女の仕事は、環境関連の専門職ということなのですが、人間の基礎である家庭の“環境”を壊してまで貢献しなければならない“環境”の仕事って、一体どういうものだろう・・・?という皮肉を感じてしまいました。何か大事なことが抜け落ちていると思います。何のために生きるんだろう、何のために働くんだろう・・・。

50周年ということで、もっとこのテーマが深く掘り下げられ、制度・メンタル改革がスピードアップされることを、本当に願っています。

(イメージ写真:2008年6月23日号Nr.26 Der Spiegel誌より抜粋)
by mikiogatawestberg | 2008-07-02 23:32 | ワークライフバランス
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